最近「文字起こし」という言葉をよく聞きませんか?
2017年1月に放送されたTBSドラマ『カルテット』で、松たか子さん演じる早乙女真紀が、在宅ワークとして文字起こしをしていました。
テープ起こし、音声起こし、書き起こしともいわれています。
そんな文字起こしってどんな仕事?需要は?ぶっちゃけ稼げるの?自分にもできる?そんな疑問に詳しくお答えします。
文字起こしって、そもそも何?
「文字起こし」は、もともとは「テープ起こし」といわれていました。テープ起こしとは、「テープの音声を文字で記す」ことです。
現在では録音にテープを使用することがほぼなくなり、ICレコーダーに移行しました。そんなことから「テープ起こし」は、だんだんと「音声起こし」と呼ばれるようになりましたが定着せず、今は「文字起こし」といわれています。
文字起こしってどんな仕事?
具体的には、
ICレコーダーなどに録音された音声ファイル(MP3など)を受け取り、
音声再生ソフト(Express Scribeなど)で再生させながら、
文書ファイル(Wordなど)に入力していきます。
句読点などを整え、完成した文書ファイルを納品します。
インターネット上で一連の作業が完了するので、在宅ワークに適しています。
需要ってあるの?
雑誌や新聞のインタビュー記事、役所や企業の会議録、株主総会、セミナー、講演会、裁判記録などの需要があります。
例えば雑誌に対談記事が載っていたら、その音声を書き起こした人(文字起こしをした人)が1人いるということです。記事を書いたライターが自分で起こしたり、テープ起こしを専業とする人や業者に依頼が来たりします。
のぞいてみよう
対談、インタビューなど
文字起こしをする人は、対談音声を受け取り、対談をしているそれぞれの人の発言を、一言一句、過不足なく文字に記して、文書ファイルを納品します。(仕様により、「あのー」「えーと」などは無機能語として削除します)それをライター等が編集して、記事ができあがります。
こちらは対談記事のイメージとして選択しました。
ただし、この記事に文字起こし専門の人が関わったかどうかは分かりません。あくまでもイメージということです。
ライターさんがご自分で起こしたかもしれませんしね。
参照経営者通信online
http://k-tsushin.jp/feature_interview/
会議録など
会議録の場合にも、誰がどんな発言をしたか、一言一句、過不足なく文字に記します。
(仕様により、文末を「ですます調」に整えたりします)
首相官邸のホームページには、さまざまな会議の議事録がアップされています。「議事録(PDF)」をクリックしてみてください。
参照首相官邸のホームページ
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/hatarakikata/
いかがですか。まさに発言をそのまま文字にしています。
とても大変な仕事ですが、やりがいがあるし、バーチャルな体験ができて面白いです。自分もその場にいるような感覚になります。
いろいろな話題に触れることができ、知識や考え方がとても広がりました。想像以上に貴重な体験です。
やってみる?
文書ファイル(Wordなど)への入力方法は2通りあります。
方法1.ごく普通に、パソコンのキーボードをタイピングして入力する方法。
方法2.音声認識ツールを使用して、マイクに向かって言い直す方法。リスピークといわれています。
音声認識ツールは貸し出しをしてくれる会社もあるようです。
「音声認識」というのは、人の声などを認識して文字にします。スマホのGoogle検索窓にあるマイク機能みたいなものです。
パソコンが使えること、ブラインドタッチができることは必須ですが、キーボード入力に不安がある人は、音声認識ツールを用いた入力方法を試してみるといいですね。
キーボードタイピングの上達方法
60分の音声で、文字数は20,000字程度になります。キーボードタイピングを楽しく練習するサイトもあります。
参照富士通 FMVサポートホームページ
http://azby.fmworld.net/usage/lesson/keyboard/typing/
勉強方法
文字起こしは、原稿の基準を統一するために、ある定められたルールにのっとって進める必要があります。
その基準となるのが、共同通信社が発行する『記者ハンドブック 新聞用字用語集』です。
これは新聞、通信、放送業界で使用している、文章を書く際の教科書みたいなものですかね。
記者ハンドブックにはATOKのダウンロード版もあり、パソコンにインストールすることによって変換時に辞書を表示させることができます。
注意が必要な語句は一目で分かるようになっており大変便利で、私の愛用品です。
「はやる」? 「流行る」?
例えば、「流行している」ことを「はやる」といいますよね。「はやりのスタイル」とか。これを書くときには、「流行る」とか「流行りのスタイル」と書いてはいけません。
なぜなら、『記者ハンドブック』ではこのように記載されています。
記事は、原則としてこの漢字表に示した字と読み(音訓)の範囲で漢字を使う。
『記者ハンドブック』第13版より引用
「この漢字表」というのは、内閣告示の常用漢字表のことです。常用漢字表では、「流」「行」の読みは次のように記載されています。
「流」には「は」という読みはなく、
「行」には「や」という読みはないので、
「流行る」ではなく、「はやる」なのです。
「しぶしぶ」? 「渋々」?
「いやいやながらする様子」という意味の「渋々」。
「断れなくて渋々と承知した」「渋々の表情でー」とかいいますよね。
これを書くときには、「しぶしぶ」ではなく「渋々」と書きます。
「しみじみ」? 「染み染み」?
「深く心に染みて感ずるさま」などという意味の「しみじみ」。
「しみじみと恩を感じる」とかいいますね。
これを書くときには、「染み染み」ではなく「しみじみ」と書きます。
できるだけ統一した基準を守る
ここで勘違いしてはいけないのは、
「しぶしぶ」や「染み染み」が間違いなのではありません。
間違いとか正しいとかではなく、「この書き方で統一しましょう」ということなのです。
最初の内は大変ですが、数をこなすうちに一つ一つ身に付いていきます。「習うより慣れろ」ですね。
どうやって勉強する?
文字起こしには、これらの漢字の表記だけでなく、
- 聞き取れなかった言葉の処理や、
- 話し言葉を、書き言葉に置き換える処理
などの細かいルールがあります。
これらを習得するために、まずは「文字起こし技能テスト」の公式テキストを購入するとよいと思います。
どうやって仕事を始める?
まずは、文字起こしの専門会社に在宅スタッフとして登録するとよいでしょう。テストを受けて合格すると、仕事を受注できます。
参照主な登録会社(一般社団法人文字起こし活用推進協議会より)
東京反訳株式会社
株式会社大和速記情報センター
株式会社アドバンスト・メディア「VoXT]
ぶっちゃけ稼げるの?
在宅スタッフとして登録すると、たいていの場合は、音声1分あたり60~120円程度という契約になると思います。テスト結果によっても幅があり、試用期間が設けられるところもあります。
時給にするといくら?
音声1分あたり60~120円程度ということは、時給にするといくらなのでしょうか?
例えば、音声1分あたり100円として計算してみます。
音声1分100円=音声60分6000円
音声60分を仕上げるのに、およそ8時間かかるといわれている
6000円÷8時間=750円
東京都の最低賃金は時間額958円(2017年10月現在)ですから、相当低いことが分かりますね。
ただし、これはあくまでも一例です。
人によってバラツキはあります。もっと早く仕上げることができる人もいるでしょうし、もっと時間がかかっちゃう人もいるでしょう。能力による幅が大きいことも特徴です。
専門性が高い音声(医療系や外国語など)だと1分あたりの金額も高くなります。
直接受注してみる
経験を積めば、自分でクライアントを見つけて直接受注することも可能になってきます。
文字起こし専門会社が、60分の音声を通常納期で請け負う場合、各社バラツキはありますが、1分あたり260円ぐらいです。
音声1分260円とすると=音声60分15,600円
15,600円÷8時間とすると=1,950円
短納期で仕上げられれば、1分あたりの金額をもっと上げることもいいでしょう。登録スタッフとは雲泥の差ですね。
在宅ワーカーは働き方を縛られないことが最大のメリットです。自分次第で、自分の能力を最大限に活用することができます。
ベテランの人の中には、文字起こしだけで生計を立てている人も実際にいるようです。
簡単にクライアントは見つからないかもしれません。しかし、なにかしらの目標を持って新しいことにチャレンジしてみてもいいかもしれませんね。
自分にもできる?
できます。パソコンが使えて耳が聞こえれば誰でも可能です。
加えて、国語の文法に精通していればもっといいです。読みやすい文章に仕上げるためです。
発言された言葉のままで読みやすい文章に仕上げるというのは、思った以上に大変です。内容を理解し、適切に句読点を打つ必要があります。
60分の音声が8時間かかるというのは、このためです。
私は残念ながら文法がさっぱりですが、それでも頑張っています。一つ仕上げるごとに確実に能力はアップしていきますから、必要なのは覚悟と努力です。
「好きなことは頑張れる」ですね。