松たか子さん主演のドラマ『カルテット』で、主人公が「文字起こし」の仕事をしている様子が放送されましたね。このドラマを見て、文字起こし(テープ起こし)に興味を持った方もいるのではないでしょうか。そんな方のために、みんなが実践している勉強方法を教えちゃいます。
文字起こし(テープ起こし)とは?
文字起こしは、もともとは「テープ起こし」といわれていました。テープ起こしとは録音された音声を文字で記すことです。
現在は、録音にカセットテープではなくICレコーダーを使用するようになりましたので、「テープ起こし」という呼び名も変化して、文字起こし・音声起こし・書き起こしなどといわれています。
「音声を文字で記す」とはどういうことかというと、ICレコーダーなどで録音した音声ファイルを、ワードなどの文書ファイルに置き換えることです。
それによって閲覧が簡単になったり、データサイズが小さくなることで保管がしやすくなります。
インタビュー記事、会議録、講演会、裁判記録などで需要があります。
まずは道具をそろえてみよう
文字起こしを始めるには、道具を少しそろえる必要があります。これだけは「絶対必要!」な物をご紹介します。
『記者ハンドブック 新聞用字用語集』最新版
これがなくては始まりません。常に最新版が必要とされます。2020年10月現在、第13版が最新です。
音声再生ソフト
音声データを再生させるのに使います。再生・一時停止・少し巻き戻してから再生などができる便利なソフトウェアです。個人的には再生速度変更機能を重宝しています。
無料版でも使えるのですが、残念ながら特定のフットスイッチしか接続できないので結局不便なんです。有料版がおすすめです。
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フットスイッチ
音声再生ソフトに接続して使います。「Express Scribe」で使うことができます。
勉強を始めよう
勉強の仕方はいろいろあると思いますが、まずはテキストを購入して、独学から始めることをお勧め>します。難しいことはいっさいありませんが、非常に根気のいる作業ですので、その適性を見極めるためにも、安価なものから始めた方がよいからです。
タイピング速度も必要です。後述する「文字起こし技能テスト」の実技編では、5分の音声を30分間で入力することとなっています。
この「5分の音声を30分間で入力する」ことができないうちは、高いお金を払って通信講座などを受講しても、時間ばかりがかかってしまい、講座期間が終了してしまいます。
ですので、私のお勧めコースはこんな感じです。
- タイピング速度を上げ、
- テキストで適性を見極め、
- 通信講座を受講し、
- 技能テストを受けよう
独学の勉強方法
文字起こしは、原稿の基準を統一するために、ある定められたルールにのっとって作業を進めます。そのルールを覚えていくことからはじめましょう。
公式テキストを活用する
一般社団法人 文字起こし活用推進協議会が主催する「文字起こし技能テスト」の公式テキストを購入するのがよいと思います。
このテキストは、大きく次のように分かれています。
- 音声再生ソフトの使い方、表記の仕方、仕様について
- 知識編
- 実技編
- 模擬試験
- では、文字起こしのルールを覚えることができます。
- では、一般用語、敬語、四字熟語、助詞の修正といったテスト形式の問題が続きます。
- は、文字起こし技能テストの実技編の練習問題です。音声データをダウンロードして練習します。上述した「5分の音声を30分で入力する」ところです。
- には、文字起こし技能テストの模擬試験問題が音声データと共に2回分掲載されています。
私は、「2.知識編」の単調な練習問題に飽きてしまったので、お勧めとしては「3.実技編」「4.模擬試験」をやりながら、合間に「2.知識編」を勉強するといいと思います。あくまで私個人の意見ですよー(飽き性)。
テキストの他に「公式問題集」と「過去問題集」が出版されています。
一般発売されている書籍を活用する
文字起こし業界の第一人者である廿里美さんが新作の書籍を発売しました。(2017年10月25日発売)
収録本文、音声データは全て新しいもので、内容もほぼ書き下ろしとのこと。140ページの大ボリュームに、音声ファイル25点と動画ファイル1点がダウンロードできます。
この本の貴重なところは26点もの音声&動画ファイル。文字起こしを身につけるうえでネックになるのが音声ファイルの入手なんです。世の中は「音」であふれているし簡単に録音もできるけれども、「答え合わせができる」というのが、とっても大事なんです。
2020年10月、廿里美さんの新刊が発売されました。独学で文字起こしを練習するのにもってこい、スキルアップ問題集です。
『聴く日経』を書き起こす
先述したとおり、文字起こしを勉強するうえで不便なのは「音声の入手」と「表記の答え合わせ」です。音声の入手だけなら他にも方法はありますが、答え合わせとなるとなかなかないんですよね。
そんなときに良いのがaudiobookの『聴く日経』。日本経済新聞の紙面から、重要なニュースを「mp3形式」で配信してくれるサービスです。月額540円(2017年10月現在)
ポイントは2つ
- 新聞で表記の答え合わせができる
- 時事問題、ビジネス用語に強くなる
世間では、新しい言葉や略語が、驚くほどどんどん生み出されています。文字起こし業界では「知らない言葉は聞き取れない」という格言がありますが、本当にその通りです。
この『聴く日経』は、表記の答え合わせができて、言葉の知識を増やしてくれる、数少ない勉強方法です。
参照スキマ時間にはビジネス書を「聴く」。オーディオブックのFeBe
参照日経電子版
オンライン講座を受講しよう
タイピング速度に自信がついて、適性を確認できたら、受講したいのはこちら。特定非営利活動法人フラウネッツ主催の「文字起こし初級オンライン講座」。文字起こし業界の第一人者である廿里美さんが講師です。
参照特定非営利活動法人フラウネッツ「文字起こし初級オンライン講座」
私は2016年に受講しましたが、文字起こしの知識を基本からしっかりと身につけることができました。
- 一回一回課題を提出し、解答と解説で勉強します。
- 講師への質問は期間中メールでいつでもできます。
- 音声はより実践的になり、最終回は添削付きです。
私が受講したときには、実際に開催された在宅ワークセミナーの録音音声を書き起こす課題となっていました。音声内容もとてもためになり、よかったです。
ただ、テキストの内容がかなり古かった気がします。「パソコンの設定をしましょう」という項目では、Windows10の時代に、XPやWindows7のままになっていましたから。
それでも、ネームバリューとは比べものにならないですし、パソコンの設定なんておまけみたいなものですからね。とても満足しています。
「文字起こし技能テスト」を受けよう
オンライン講座の受講が終われば、十分な知識が身についているはずです。技能テストを受けて、自分のレベルを認識しましょう。
このテストは1000点満点ですが「◯点なら合格」というものではありません。TOEICみたいな感じですね。
仕事ができるレベルは850点以上が目安だといわれています。ぜひ頑張ってみてください。900点以上とるといいことがあるみたいですよ。
開催は年に2回。受講料は5,000円(税別)です。(2017年10月現在)
参照一般社団法人 文字起こし活用推進協議会「文字起こし技能テスト」
どんどんお仕事しよう
文字起こしは根気がいる作業ですが、とっても楽しく奥が深いお仕事です。
一つ一つ経験を積み重ねることが、なによりの勉強になります。仕事を始めてからも、知らない言葉に出合うことがたくさんあります。やればやるほど上達するので、頑張ってみてください。
「仕事を始めてからが本当の勉強です」と廿さんもおっしゃっていました。どんどんお仕事して、たくさん勉強しましょう。